熊本市南西部でナスづくりが始まったのは昭和20年代のこと。それ以来順調に出荷数を伸ばし、今では全国でも有数のナスの産地として知られるようになりました。10月から6月にかけて出荷される冬春なすは「肥後のでこなす」の愛称で呼ばれ、肉厚でアクが少ないことから、幅広い料理に活用できます。
「肥後のでこなす」は、熊本市で生産する長ナス「筑陽」の商標で、鮮やかな濃い紫色と実が詰まっているのが特徴。表面がおでこのようにつやつやと光沢があることから「でこなす」の愛称がつけられました。秋から春にかけて収穫期を迎え、九州はもとより全国各地へと出荷されています。 8月から9月にかけて定植すると、一カ月後には交配。交配後25〜30日に、一つひとつ手作業で収穫されます。その間、花芽つみや、4本に仕立てた樹の枝を吊りヒモに括るなどの細かい作業が続きます。日照量により土の温度の上がり下がりを見ながら水をやるなど、きめ細やかな手入れを経て、最終的には一本の苗から約200本もの「でこなす」が収穫できます。また、頑強な耐候性ハウスの導入がすすんだことにより、光や温度、湿度などをセンサーで感知。自動で窓やカーテンを開閉したり、霧状の水分を撒くなど、「でこなす」にとって最高の環境を創造していきます。このような設備の拡充に伴い、意欲的な後継者も数多く育っています。
「消費者の皆さんに、安全・安心でおいしいナスを」と語るのは、ナスをつくり続けて42年の後藤義明さん(61歳)。今の季節は、午前中に収穫、午後は交配作業と忙しい毎日です。熊本市南西部の「でこなす」農家は全員エコファーマー(※1)の認定を受け、害虫予防に粘着板・防虫ネットの使用を徹底。日々農薬を減らす努力を重ね、品質の向上と均一化に取り組んでいます。
※1 エコファーマーとは…エコファーマーとは、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律に基づき、都道府県知事が認定した環境に優しい農業者(認定農業者)の愛称です。
JA熊本市 http://www.ja-kumamotosi.jp/
取材日 平成21年10月6日